kyonyの探訪記

茨城を中心に、交通や街並の風景をお届けします。だいたい毎週日曜更新、予定。

茨城県道27号 塙大津港線

終点の大津港

茨城・福島県道27号 塙大津港線 は、福島県東白川郡塙町から、阿武隈山系の山中を通って、茨城県北茨城市の大津港へと至る県道です。数少ない、福島県とを行き来する県道*1のひとつです。

この道は江戸時代より、棚倉藩の城下と棚倉藩の外港であった平潟港とを結ぶ街道として整備された、歴史のある道です。平潟港はかつて東廻り海運の幕府公認の寄港地として繁栄し、塩や廻米といった物資の経由地でした。この道は、棚倉藩の物資を運ぶために重要な役割を果たしており、「塩の道」とも呼ばれていたようです。

「塩の道」の道筋を、この県道27号が引き継いでいます。棚倉は福島県、平潟は茨城県となり、双方の結びつきはかつてほどは見られなくなっており、伴ってこの道の往来もそれほど多くはなく、ひっそりとした山道となっています。北茨城市関本町才丸近辺で見られる幅員の狭さにそれは体現されており、茨城県北の魅力的な険道*2のひとつとなっています。

終点の大津港は、平潟港の少し南側に位置する、県下有数の施網漁港です*3。江戸時代に繁栄していた平潟港よりも規模が大きい漁港となっています。


データ

総延長:56.089km*4
起点:福島県東白川郡塙町大字塙 塙町役場前 map
終点:茨城県北茨城市大津町 大津港 map
路線認定年:福島県=S39.12.28*5 茨城県=S34.10.14*6

福島県区間概況

路線の起点は、塙町役場前の交差点にあります。交差点の青看には県道27号ではなく175号のヘキサ*7が案内されています。塙町の市街地を南下し、川上川とぶつかると針路を東にとって、川沿いを遡上します。県道111号高萩塙線との交差点から山に入って、那倉地区では国道349号と重複しつつ、県境を迎えます。

福島県区間走行レポート


▲県道27号の起点のはずですが、ヘキサは県道175号のみの表記となっています。

▲起点の交差点と塙町役場。


磐城塙駅前の通りです。この区間、実は県道27号単独です。先ほどの青看は少しウソをついているようです。


▲この交差点より先から、奥に見える三角屋根の磐城塙駅までが、県道175号磐城塙停車場線の区間なんですね。全長69mだそうです*8。県道27号は右折します。


▲昭和の雰囲気漂う塙市街地を南下します。この通りはもともと国道118号でした。


▲初めて県道27号のヘキサが出てきましたね。川上川の橋のたもとの交差点を左折します。


▲初ヘキサです。


▲先ほどの初ヘキサを引いて撮影。しばらくは川上川に沿って登っていきます。跨ぐ高架は水郡線


▲県道242号 赤坂東野塙線との分岐。赤坂東野は鮫川村中心部の大字です。国道289号に出て、いわき市勿来へと至ることもできます。


▲笹原集落。里山の小集落を縫って東進します。



県道111号 高萩塙線分岐。直進しても茨城にたどり着きます。111号もなかなかの険道っぷりですよ。


▲国道349号との合流までは、勾配がきつい区間もありますが概ね快走路です。大津港までの距離の案内も示してくれています。


福島県道の案内標識はマメ。こんなものもあります。



▲那倉地区で国道349号と合流し、しばらく重複区間となります。重複区間でもしっかりと県道のヘキサが健在です。


▲重複開始の交差点には、「高・中速車」の補助標識が健在。1992年に廃止された区分で、今ではなかなかレアな標識となりました。


▲那倉日向集落。Mobilがいい味出しています。



▲重複区間の追分。見落としてしまいそうな交差点です。



▲離合は不可能ではありませんが、センターラインはありません。緩いカーブを経ながら軽い上り坂を県境に向かって登っていきます。



▲県境に到達。特に天然要害というわけでもありません。

茨城県区間概況

県境を越え、峠の急坂を下ると、北茨城市関本町小川の集落にたどり着きます。この近辺あたりは、離合が困難な部分もある、細い山道が続きます。同地区の亀谷地湿原付近からは県道が北ルートと、後年に追加された南ルートに別れます。2ルートともに険しく、このあたり本路線で最も険しい区間で、ところどころ待避所のある1車線幅が5kmほど続きます。
南北に別れた県道が再び合流して、観光地の花園渓谷にさしかかると道幅が広くなり、一部は改良されセンターラインが現れます。北茨城市華川町花園の県道水沼磯原線分岐より先は再び狭くなり、関本町富士ヶ丘から道幅が2車線になります。
富士ヶ丘からは典型的な里の道となり、道幅は2車線を保ったまま、大津港駅周辺へとたどり着きます。常磐線を越えると大津港駅前の街並みとなり、国道6号と接続します。
国道6号とは50mほど重複した後、大津町の市街地へと至る、センターラインのない2車線路となります。
大津町の市街地を抜け、大津港の北側を通り、港の東端である断崖の手前で突如として県道が終点となり、往来は市道へとシームレスに接続します。

茨城県区間走行レポート



茨城県に入り、すぐに最初のヘキサが現れます。ヘキサは県ごとに特色があって面白いですね。道幅が狭いです。


▲県境を越えた後も少し登り、そのあと勾配10%の急坂を下っていきます。カーブもきつめ。道は改良されて、離合も問題ありません。


▲立派な青管が現れます。関本町小川の集落にたどり着きます。



▲関本町小川の集落。数軒の住宅があります。


▲ここから10kmの区間は連続雨量220mmで通行止めになります。花園渓谷あたりまでですね。


▲関本町小川集落を抜けると再び険しい山道となります。所々修繕が施され、その区間では少し幅員が広くなります。



▲亀谷地湿原の入口にて、南北に県道のルートが別れます。両方行っても山を下ることができます。基本的には北ルート(一枚目の写真の左へと抜ける道)が専ら利用されています。



▲【北ルート】,まずは北ルートから。関本町才丸に入ると、ヘアピンカーブや離合不可能な道幅が現れます。このあたりがもっとも険しい区間となります。


▲【北ルート】思い出したようにヘキサが現れます。


▲花園渓谷の末端部に位置するここで、南北ルートが合流します。


▲【南ルート】続いて、あまり利用されていない南ルート。


▲【南ルート】林道のようですが、茨城県管理となっているので県道であることに間違いはありません。


▲【南ルート】旧規格の「警笛鳴らせ」「待避地点」の標識が設置されていますね。


▲【南ルート】交通量が少なく、路面は少し荒れ気味です。

▲南北ルートが合流します。



▲南北ルート分岐から下ると、美しい花園渓谷と併走します。秋は紅葉の素晴らしい道となります。



▲花園神社との分岐。県北では、ちらほら花園神社の交通安全お守りが貼り付けてある車を見かけます。このあたりからセンターラインが復活します。



▲華川町花園の水沼集落。県道153号水沼磯原線と分岐します。153号へ流れるほうが優先道路となっています。



▲水沼の分岐を過ぎると再びセンターラインが消え、山道が復活します。所々では幅員が1台分程度になり離合が難しい部分もあります。


▲本路線で初めてオレンジのセンターラインが現れました。長い長い山道が終わりを迎えました。



▲富士ヶ丘十字路。県道10号日立いわき線と交差します。この県道10号を境に里と山が別れます。


▲関本町福田。住宅が増え、走りやすい郊外路線として変貌します。


▲市民病院北交差点で県道155号山根神岡上線と交差します。


▲その先、五浦変電所前交差点では、県道155号の旧道と交差します。



▲大津港踏切。港からずいぶん離れていますが……。


▲踏切のすぐ近くに大津港駅があるのでした。


▲踏切を渡ると大津港駅前の街が広がります。県道は信号を右折。


▲正面の交差点では本路線唯一の矢印信号機が。


北茨城市民病院の跡地にはヨークベニマルを核とするショッピングセンターが。


▲高速道路案内。いわきを省略した「勿来」と案内。



大津港駅入口交差点で国道6号と合流します。



▲すぐに重複区間は終わり、県道は交差点を右折。


▲この道は、戦後直後に行われた国道6号の道路改築が施されるまでは国道だった、昔の街道筋。


▲このあたりが大津港の市街地中心部。



▲旧街道筋はここを右折して神岡上集落へ。県道はここを左折。


▲大津港北側の住宅街を抜ける。


▲今まで親切な案内を続けていた県道でしたが、ここでなんの案内もなく県道が終わります。

地理院地図でもこのあたりで黄色(県道)が途切れています。
国土地理院「地図・空中閲覧サービス*9」より引用


▲終点付近より大津港を俯瞰。

取材時期:2019年8月