国道349号は、茨城県内では、県都の水戸と那珂・常陸太田とを結ぶ地域の幹線道路として、ほぼ4車線での整備が為されていますが、福島に入ってしばらくは、幹線としての役割から外れ、阿武隈高地の山あいの小集落を縫うルートをとります。
矢祭町東館から鮫川村へと至る区間は、国道制定前は県道ですらなく、国道昇格直前期の地理院地図を見てみると、軽車道程度の道として表記されています。どうしてこのような山道が国道に指定されたのか、経緯を調べてみたいものです。
そんな隘路の林道であった道も、国道制定後から40年以上が経ちますから、それなりに改良の手が加えられ、大小なりのバイパスが設けられました。バイパスが建設され、旧道になった道の端に、当時の様子を物語る遺産が遺されていました。
それがこの”おにぎり”*1です。
塙町の呼石という集落を通る国道349号の旧道に、おにぎりは凜と立っていました。
支柱は錆び、蔦が絡まっていますが、看板自体は綺麗に残っており、堂々としています。
道幅は1車線幅程度しかなく、離合は不可能。軽トラでしか走ってはいけないような、まるで田んぼの畦道の様相ですが、かつて天下の国道であったことを証明しているのです。おにぎりが無ければ、信じられなかったでしょう。
愛車のアクセラではギリギリ幅一杯でした。ひと昔前ではこのような道が、延々と続いていたことを想像させます。
茨城・福島における国道349号は近年改良が著しく、旧道がどんどん生まれています。これら旧道の姿を追っていく企画というのも楽しそうですね。温かくなったら、バイクで取材に出かけてみようと思います。
取材時期:2019年12月
*1:国道番号を示す看板(118-A)。角丸の逆三角形のかたちが、さながら「おにぎり」だったので、マニアの間ではそう呼ばれます。